ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜


 それから1週間。

 創くんは、アルバイトで帰りが夜になる度、私を家まで送ってくれるようになった。

「じゃあ、また明後日っすね。お疲れ様です。」

 いつものようにそう言って、あっさりと帰っていく彼。


「待って。」

 私は、一瞬ためらいながら、その後ろ姿に慌てて声を出した。


「ん?」

「もう、送ってくれなくて大丈夫だよ?」

 何度断っても、半ば強引に着いてきて、いつも家まで送ってくれていた創くん。今までは、そんな彼の優しさを無碍(むげ)にはできず、甘えてきた。

 でも、そろそろ言わなくてはいけない。

 ここまでずっと迷惑をかけてしまったけれど、ただのバイト仲間で、その上、年下の男の子にここまでしてもらうなんて、申し訳なくて仕方ない。

「だってほら、つけられてる感じもしないし。それに、創くんにここまでしてもらう義理、私にはないもん。」

「いや、別に俺は、嫌々やってるわけじゃ――」

「いいの!本当に。大丈夫だから。」

 彼の言葉を遮って、突き放すようにそう言った。困惑した表情を目の前にしながら、私は笑顔を取り繕う。


 こうして彼の優しさを断る理由。

 それは、ただ単に迷惑をかけられない、というだけではなかった。実はもうひとつ、大きな理由があった。