ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜


 声に反応して立ち止まったものの、すぐに会釈をして歩き出す。

 きっと、胡桃ちゃんと約束でもあったのだろう。そう思い、邪魔してはいけないと素通りしようとした。


「ごめん。俺、瀬川さん待ってたんだわ。」

 しかし、そんな声が聞こえてきて、さすがに無視するわけにはいかなかった。

「じゃ、また明日バイトで。」

「え、ちょっと創さん!」

 彼女の腕を振り払い、小走りで駆け寄ってくる彼。私は思わず立ち止まり、ゆっくりと振り返っていた。


「なんで?」

「あんなこと聞いて、放っとけるはずないでしょ。家まで送ります。」


 私は、そんな創くんの顔を見上げ、戸惑いを隠せずにいる。

 立ち尽くす胡桃ちゃんと目が合うと、ムッとした表情で、去って行くのが見えた。


「私、とことん恨まれそう.....。」

 わざわざ、私を家まで送るために来てくれた創くん。こんなの、胡桃ちゃんからしたら面白くないに決まっている。

 彼女の後ろ姿を呆然と見つめながら、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。