「なんか、誰かに狙われてんすか?」

 すると、同じ目線に立ち、冗談っぽく言う創くん。

 私は目を丸くし、彼の横顔をジッと見つめる。その言葉を、馬鹿正直に間に受けてしまった。


「えっ......。」

「え?ああ、ごめん。なんでもない。」

 すぐに反応の間違いに気づき、歩き出す。

「ちょちょちょちょ、今の何すか。」

 しかし、そう言う創くんにパッと腕を掴まれ、引き止められてしまった。


「ごめん、反応間違えただけだから。」

「じゃなくてっ。」

 目も合わせず、背中越しにする会話。掴まれた腕にギュッと力がこもると、彼はボソッと呟いた。


「普通に、気になるんで。」


 その言葉に、スッと力が抜けた気がした。

 私は諦めたように振り返り、彼の顔を見上げる。すると、少し照れ臭そうに顔を赤らめる表情が見え、正直驚いた。

 そんな素直な顔の創くんを、私は見たことがなかったから。


「大した.....ことじゃないんだよ?」

 苦笑いを浮かべ、俯く。腕からそっと彼の手を離すと、近くの壁に寄りかかった。


 実際、"見られているような気がした"というだけで、なんの証拠もない。勘違いだったかもしれない。

 ここで言っても、心配をかけるだけのようで、打ち明けるだけで少し恥ずかしい気もした。