「これ.....。」

「結婚指輪。ずっと渡せなくてごめん。」


 輝くシルバーのリング。

「いつから.....?」

 そう声を漏らしながら、口元に手を当てる。全く気づかなかった存在に、いまだ手の震えがおさまらなかった。


「これで信じてくれとは言わない。俺のこと、信じられなくても当然のことしたと思ってるから。だけど、これだけは断言するよ。隠し事はあっても、嘘をついたことは一度もない。今まで言った言葉に、何も嘘はなかった。」

 目の前の指輪を見つめながら、いろんな感情が入り混じる。


 そのあと、どうやって電話が切れたかはうろ覚えだった。

 何か言っていた彼の声に、なんとなく返事をするだけで、放心状態の私は座ったまま動けずにいた。


 しばらくして、私は指輪をケースから抜き取り、そっと薬指にはめてみる。

 その時、自然と涙が頬をつたう。


「なんで、知ってるの。」

 私の左手には、指輪がぴったりとハマっていた。