しかし、同時に湧いてくる感情。

 良い人と出会った――。

 その言葉が重くのしかかり、後ろめたさを感じていた。


「2人の間に、何があったのかは知らないわ。でも、少なからず息子のことは、よく思ってくれてるんでしょう?」

「それは.....」

 口籠もり、どう答えたらいいか分からなかった。そんな私を見て、ニコッと微笑む聖子さん。


「あんなに避けてた私たちを、わざわざ家に招待してくれた。いつもみたいに断ることだってできたのに。でも、そうしなかった。......私、思うのよ。きっと、あなたと会う口実が欲しかったからじゃないかって。」


 思いもよらない言葉に、目を泳がせる。

 言葉を失い、動揺せずにはいられなかった。


 千秋さんからきたメッセージを思い返し、半信半疑になる。


 私はずっと、ご両親がどうしてもというから仕方なく――。

 そんなところから呼ばれたのだと思いこんでいた。むしろ、あのメッセージはそういうニュアンスを秘めていた。


 それなのに、いつもみたいに断ることもできた。そう聞いてしまうと、まるで話が変わってきた。

 私が呼ばれたのは、ご両親への面目を保つためじゃない。そんなの、もはやどうでも良かったのかもしれない。