「勘違いさせたならごめん。たしかに、君のルックスだったらよくされてるんだろうね、ナンパ。男が好きそうな顔だし。」

 含み笑いを浮かべながら、まあまあ失礼なことを言い出す。初対面の女性に言うことだろうか。

 私は自然と彼を睨みつけていて、思わずため息が出た。


「ごめんね、晴日ちゃん。あいつ、俺の大学の時からの友達で。あんま気にしなくていいから。」

 すると、近づいてきて申し訳なさそうに言う零士さん。

 その言葉を聞いて、やっと納得した。常連というより、友達。私は、あーっと声を出しながら彼と目を合わせ、ひとまず会釈をする。

 なんだか、また酔いが冷めた気がした。


「零士さん、もう一杯。」

 私は、彼のことなんて無視をして、また1人の世界に入ろうとした。

 別に、誰かと飲みたくて来てるんじゃない。好きなだけお酒を飲んで、酔っ払って、嫌なことを忘れたい。それだけ。


「本当にこれで最後にしろよ?」

「えー。」

 自分では、そんなに飲んだつもりはないのに、若干怒られながら出されたお酒。グラスを手に取り、不満げに口を尖らせた。


「何?やけ酒?」

 すると、また右の方から聞こえてくる声。長い足を組みながら、頬杖をつき横目で意地悪い笑みを浮かべている。

 本当に感じが悪い。