濡れた髪から、たまに落ちる水滴。彼は首から下げていたタオルで、髪をわしゃわしゃと掻き乱すと、意識したように私から目を逸らした。
「ベッドは使って。俺はこっちで寝るから。」
すると、冷たくそう言い残す。
ベッドの反対側に周り、フローリングの硬い床に座り込む彼は、事前に用意していた寝袋を広げ始めた。
私は、こちらに向けられた背中をボーッと見つめ、おもむろにベッドの中へと潜り込む。
なぜかその時、無性に寂しさを感じた。
自分でもよく分からない。ベッドを見てため息をついたり、一緒に寝る部屋を前に気合いを入れたり、正直困っていたはずだった。
けれど、いざ別々に寝ると言われた時、身勝手にも少しだけ寂しさを覚えてしまった。
千秋さんはその後、何も言わずにまた部屋を出ていった。遠くの方で、ゴーッと鳴るドライヤーの音。その間も、私は同じ体制のまま、一点を見つめていた。
右側には、ぽっかりと空いた空間。
ひんやりと冷たい、フローリングの硬い床。
音が止み、彼が戻ってくるまで、私の心はモヤモヤしたままだった。
本当は、言いたいことがすぐそこまで出かかっていた。けれど、言えない。
言いかけるたびに何度も言葉を飲み込んでしまい、口をパクパクさせながら、なかなか言い出すことができずにいた。
「じゃあ、おやすみ。」
黙り込んでいる間に、電気を消そうと立ち上がった彼が、私の前を通り過ぎて行く。
その瞬間、私は最後のチャンスだと勇気を出し、握りしめた布団にギュッと力を込めた。

