深まる謎。

 一度は、創くんの言う食い違いに納得できたように思えたけれど、やはり、それだけでは納得いかないことが多かった。

 単純に偶然だったなんて言えないほど、その偶然とやらは重なりすぎていた。


「全部全部ただの偶然で、治験に協力してた病院の娘と、たまたま結婚した?偶然が重なるにも、程がある。」

 自分が今、話している相手は創くんだということを、途中からすっかり忘れ去っていた。


「それに、何も説明できなかったし。父とのことだって、バーで会ったことだって、偶然だったならそう言えば良かった。」

 また大人気なくムキになり、少し声を荒げていた。そんな姿、ちゃんとした精神状態だったら、きっと見せたくはなかった。


「卒論の題材にでもしようかな。」

「え?」

「偶然に偶然が重なりすぎると、どうして人は理由をつけたがるのかって、心理論。」


 人を観察するように、ジロジロと見つめてくる彼。

 その時やっと我に返り、自分が暴走してしまったことに気づく。顔が一気に熱くなった。


「まあ、それもそうか。そんなことあったら、何か裏があるって思うのも当然っすよね。」