ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜


 予想以上に近かった距離。私の後ろで少し屈んで絵を見ていたせいか、彼の頬に鼻がかすりそうになった。

「あ。すみません。」

 そう言って、すぐに状況を理解した彼。お互い後ずさり、なんだか変な空気が流れた。


 言葉に詰まり慌てて話題を探す中、いつまでも冷静な彼は私からひょいっと絵を取り上げて言う。

「晴日って、晴れの日って書きますよね。これ、瀬川さんの名前みたいじゃないですか。」


 寒さからか、少し赤くなっていた耳。

 鼻水をすすりながら、まじまじと絵を見る横顔は、いつになく穏やかな表情をしていた。


「これ、元気になる絵。だからプレゼントします。」


 突然そんなことを言い出すもので、私は不思議に思った。

「急に、どうして......?」


 すると、彼は絵画を私に差し出し、こう言う。

「だって昨日の瀬川さん、なんか様子おかしかったっすよ?心のケア。必要でしょ?」


 昨日、胡桃ちゃんに散々牽制されたことなんてまるっきり忘れ、どうしようもなく嬉しくなっている自分がいた。

 こんなに年下の男の子に、キュンキュンさせてもらえるとは思ってもみず、正直嬉しくてたまらなかった。

 彼は、わざわざこのために来てくれたのだ。