「え、なんで?」
翌朝、チャイムが鳴った。
インターホンに映っていたのは、創くん。慌てた私は彼を外で待たせ、急いで身支度を整えた。
27歳にもなると、ふらっとスッピン眼鏡のままで人前に出られるのは、せいぜい宅急便が来た時くらい。
アポ無し訪問はなかなか心臓に悪く、ましてや20歳の男の子に見られるとなると、この格好は少し辛いものがあった。
「ごめん、寒かったよね。お待たせ。」
軽くファンデーションだけでもと思ったものの、やり始めるともう少し、もう少しと手を加えてしまい、結局何分も待たせてしまうことになった。
「大丈夫です。」
扉を開けた瞬間、小刻みに震えている姿が見え、若干の申し訳なさを覚えた。
「どうしたの?急に。」
「すみません。ちょっと置き忘れてたものを思い出しまして。」
すると、靴を脱ぎながら、慣れたように家へ上がる彼。
それならそうとLINEでもして欲しかった、と内心ボヤく中、なぜか彼は玄関前で立ち止まったきり動かなかった。
「あの、もう瀬川さんの部屋なんで、自分が入るのは.....。探してきてもらえます?」
「え?あ、うん。」
そういうことかとハッとして、慌てて動き出す私。まさかそんな気を遣われるとは思わず、驚いた。

