「え、送ってきましょうか?」

「何言ってんの。開店しちゃうよ?」

「あー、そっか。」

「ありがとう。お疲れさま。」


 笑顔でそう言い残し、スタッフルームに入る。

 思わず、ふぅーっと一息つくと、私はゆっくり制服を脱ぎ始め、自分のロッカーの前に立った。



「あのっ。」

 ボーッと1人の世界に入りながら着替えていると、扉が開いたのにも気づかず、呼ばれた声を聞いて初めて我に返った。

「あ、胡桃ちゃん......。ごめんね?迷惑かけちゃって。」


 そこから慌てて服を着た私は、荷物をまとめながらそう言って、急いで帰ろうと一歩踏み出す。

 すると、私の目の前に立ちはだかり、ギロリと睨みつけるようにこちらを見上げてきた。


「そんなこと、どうでもいいんです。」

「え?」

「瀬川さんって、結構したたかですよね。わざわざ創さんの来るタイミング見計らってか弱いとこ見せて、気を引こうとかやめてください。」


 いつもは不気味なほどの笑顔を向けてきていた彼女が、今日は一段と怖い顔をしていた。

 なんだかまた勘違いをされているようで、どう弁解すればいいかと迷った。