1人になった瞬間、着替える気力もなくなって、力が抜けるように近くの椅子に座り込んだ。

 おもむろに携帯へと伸びた手が、無意識のうちに画面を開く。すると、先ほどまで見ていたメッセージが、開いたままになって残っていた。


『久しぶり。突然だけど、来週の土曜、両親が帰って来ることになったんだ。晴日ちゃんに会いたいって言ってる。こんなこと言えた義理じゃないのは分かってるけど、1日だけ、戻ってきて欲しい。」


 大きなため息が出て、無造作に携帯を手から離した。


 頭を抱えるようにして、真っ白な机をジッと見つめながら、呼吸を整える。

 かれこれ半年近く、連絡なんてこなかった。一度だけあった着信を無視して以来、なんの音沙汰もなく、もう2人の関係は終わったのだとそう思っていた。

 そんな彼――千秋さんからの突然のメッセージ。


 もう、だんだんと過去になっていたとばかりに思っていた彼とのこと。しかし、名前を見た瞬間、一気に記憶が頭の中を駆け巡り、いろんな感情が鮮明に思い出されていった。



「瀬川さん?」

 制服のまま座り込んでいると、ちょうど出勤しようとする創くんが声をかけてきた。

「大丈夫っすか?」

「あ、ごめん。ちょっと体調悪くて、休ませてもらっちゃった。」

 彼に気づき、心配かけまいと慌てて立ち上がる。朝から食欲もなく何も食べていないせいか、足元が少しフラついた。