「あ、瀬川さんも。おはようございます!」

胡桃(くるみ)ちゃん、おはよー。」

 こちらをほとんど見ることなく、ついでのようにわざとらしく付け加えられた挨拶。

 思わず、作り笑いを浮かべた。


 顔を合わせると、いつも決まった笑顔を作り、営業スマイルを向けてくる彼女。背中越しにでも、心の中の舌打ちが聞こえてきそうな勢いで、私は嫌われている。

 そんな彼女は、要注意人物。


「2人で何話してたんですかー?」

「ううん。なんでもないよ?じゃあ、私はお先に。」

 危険信号を察知して、慌てて創くんから離れる私。


 胡桃ちゃんは、私たちよりも前からお店で働いていた、創くんの大学の後輩。

 とにかく分かりやすく、初対面の時から彼をロックオンしていて、それは誰の目から見ても明らかだった。


 そんな胡桃ちゃんに、私はいつの日からか敵意剥き出しに嫉妬されるようになった。2人で話しているところを見られた日には、今日のように飛んできて割って入られるのだ。


「創さんってー、瀬川さんと仲良すぎじゃないですかー?」

「そんなことないけど。」

「えー、絶対胡桃の時と態度違いますよ。胡桃にも優しくしてください!瀬川さんだけいっぱいフォローしてもらってて、ずるいですー!」