この1週間。家でも職場でも、腫れ物に触るみたいに扱われ、誰にも言えなかった思い。いつも真っ先に話を聞いてくれていた桜も、今回ばかりは踏み込んでこなかった。


「本当はね、桜ちゃんだったのよ。今回のお見合い。」

「え.....」

「でも、先方にお断りされちゃってね。」

 突然、打ち明けられた事実。初めて聞く話に驚いて、言葉にもならなかった。


 母は、そんな私をよそに話を続ける。

「ほら、あちらは一人息子でしょ?秀介さんが跡を継いだ後、将来は彼の子供が跡を継ぐことになる。そうなった時、体の弱い桜ちゃんが子供を産めるのかって、心配されててね。もし産めたとしても育てられるかって。」

 涙ぐみながら、悲しそうに口元をおさえて言う。そんな姿に、私はなぜかサーッと血の気が引いていくのを感じていた。


 きっと、桜が子供を産むのは難しい。


 医者でなくても、一番近くで見ていた私はなんとなく分かっていた。家でも長時間歩くことはできなくて、少し外へ出るのも一苦労。悪い時は、一日ベッドから起き上がれないことだってある。

 あの結婚式だって、先生が付き添っていても、ギリギリまで迷ったほど。

 だから、そんな桜が出産に耐えられるとは思えない。分かっている。分かっているけれど.....


「そうしたらね。体の弱い桜ちゃんじゃなくて、次女の晴日ちゃんとなら話を進めましょうって。......仕方なかった。病院存続のためには、神谷製薬さんとの関係を築くのが不可欠。矢島さんとのことを諦めてもらうほかなかったの。」