ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜


 マンションへ帰ったのは、夜の7時を過ぎた頃。

 すぐにベッドへ飛び込んで、そのまま部屋へ閉じこもる。食欲もわかず、ただボーッと天井を見つめていると、ただただ時間だけが過ぎていった。


 そんな時、扉の向こうで物音が聞こえた気がした。

「ん......?」

 むくりと起き上がり、壁に耳を当てて様子を伺う。すると、やはりバタバタと足音が聞こえ、そっと扉を開けてみた。


 そこには、黒のジャージ姿で腕組みをしながら、千秋さんが玄関前を行ったり来たり。一人落ち着かない様子でいるところを、思わずジーッと扉の隙間から見つめていた。

 不審に思うこと、数十秒――。

 やっと私がいることに気づくと、千秋さんは途端に足を止めた。


「......走りにでも、いくんですか?」

 私はスーッと扉を開け、笑って誤魔化す。


「なんだ、帰ってたんだ。」

「え?」

 しかし、返ってきた言葉は私の予想を反していた。

 彼は、なぜか羽織っていたジャージを脱ぎながら、引き返すようにリビングへと戻っていく。これから出かける予定ではなかったのか。

 誰もいなくなった廊下で、一人ポカンと立ち尽くしていた。