不思議に思いながら、足元にある小さな頭にそっと手を添えようとした。でも、私の元にいたのは、ほんのわずか。すぐに離れていってしまった。

 そして、今度は千秋さんの前に立ち、彼を見上げる。

「なー、千秋!」

「ちょっと、礼央!また呼び捨てにして......」

 後ろで呆れたように怒る双葉をよそに、礼央は構わず彼の服を引っ張る。


「なに?」

「俺が大人になるまでだったら、晴日のことあげてもいいぞ!千秋なら許してやる!」


 向けられた、純粋で真っ直ぐな瞳。

 何を言い出すのかと思えば、彼を認めたような口ぶりで、生意気盛りな言葉。思わずクスクスと笑ってしまうと、千秋さんも驚きのあまり笑い出した。


「あー!でも俺が大人になったら、もう一度勝負だからなー!」

「分かったよ。しょうがないから、大人になるまで待っててやろうか。」

「男と男の約束だぞ!」


 閉まりかける扉。その隙間から、私たちは最後まで笑顔で手を振った。

 すっかり意気投合してしまい、今では私よりもずっと千秋さんに懐いているように見えた。帰り際も、「晴日のとこ泊まってく」なんて言ってたけど、しっかりと掴んでいた千秋さんの手。

 ほんの少し、ヤキモチを妬いた。