「晴日、遅くまで本当にありがとう。助かったよー。」

「ううん、私は何も!ほとんど千秋さんが遊んでたから。」

「あー、ありがとうございます。」

 双葉が迎えに来たのは、夜の8時を回ってからのことだった。夕食まで済ませ、玄関先で礼央を引き渡す私たち。


「いえいえ。俺も小さい子と遊ぶのなんてなかなかないから、新鮮で楽しかったよ。な?」

「おうっ!」

 そう言って、2人はハイタッチを交わした。


 初めは、「晴日は俺のだ」なんて言いながら、小学生からバチバチに敵対心を向けられていた。

 腕相撲からテレビゲームまで、色んな遊びで何かと勝負を挑む。でも、そのうちだんだんと私のことなんて忘れて、千秋さんとの遊びに夢中になっていた。


 夕方は、マンションの最上階にある、体育館のようなフリースペースへ行き、サッカーやキャッチボールをする2人。

 ベンチで写真を撮りながら見ていた私は、どこかの親子の休日を見ているようだった。


「じゃあ、礼央。帰ろっか。」

 双葉は時計を気にしながら、そろそろ帰ろうと扉に手をかける。礼央の手を引いて、私の目を見て微笑んだ。

「あ、待って!」

 しかし、双葉の手を離れ、私の足にギュッと抱きついてきた礼央。驚いて、追突してきた振動とともに、小さな声が漏れる。