幸いなことに病院の近くまでは来ていたので、直ぐに向かうことが出来た。

着いた頃には正面玄関は閉まっていて、お兄ちゃんは迷わず関係者入口を通って中へ入った。


夜の病院ロビーは非常灯の緑の灯りだけしか灯っておらず、薄暗くてしんとしていた。

エレベーターで上の方の階まで登ってきた。

少し小綺麗な廊下を進むと、「神崎 凛 様」と書かれたプレートがはめられた病室の前にたどり着く。


私の手を強く握り直したお兄ちゃんは少し重いその扉を静かに開けた。


ベッドの上には青い顔で横たわる凛ちゃんの姿があり、はっと息を飲んだ。

心電図の無機質な電子音と、点滴が落ちる音が静かな病室に響きわたる。


凛ちゃんの傍には、祈るようにその手を握る叔母さんの姿があった。


「真守」


背後から声がしてふたりして振り返ると、険しい顔をした叔父さんが私たちを見下ろしていた。

繋いだ手を一瞥した叔父さん。


「まもっ……お兄ちゃん、手っ」


慌てて解こうとしたけれど、お兄ちゃんは離さなかった。