「好きでいるのは真佳ちゃんの自由だけど、いつかきっと後悔するよ。真守くんは、私の真守くんだから」


ふふ、と肩を竦めた凛はパッと顔を上げると席を立った。そして「正樹さーん!」と大きく手を振り歩き出す。

少し歩いて、パッと足を止め振り返った。


「この話、私と真佳ちゃんの秘密ね。もちろん、真守くんにも。だって真佳ちゃん、誰かにバレると困るでしょ? まあ、私は誰に知られても困らないけれど」


しぃ、と唇に人差し指を当てた凛ちゃんは楽しそうに笑ってナースステーションへ歩いていった。


誰もいなくなった待合室に私の荒い息遣いだけが聞こえる。

ばくん、ばくん、と心臓はまだ耳の横にでもあるかのように嫌な音を立てて激しく鼓動する。

ぎゅっと背中を丸めてきつく目を閉じた。


どうして、なんで?

どうしてばれたの、なんで知ってるの?

凛ちゃんがお兄ちゃんを好き……?


訳が分からない、分かりたくなかった。

頭の中がまとまらず、胸の中の感情もぐちゃぐちゃだった。



『いつかきっと後悔するよ』

『私の真守くんだから』


その言葉はどういう意味で言ったの?