お兄ちゃんは私の背に回した手により一層力を込めて、痛いくらいに私を抱きしめる。


「離して、お願い……っ。私はこんな風に、して貰えるような人じゃない……!」


どん、とその胸板を叩いた。

びくともしなかった。


「……ごめん、俺のせいだ。全部俺のせいだ。真佳にそんな風に思わせたのも、全部。真佳は何一つ悪くない」

「違う、そうじゃないっ」


そう言って顔をあげれば、お兄ちゃんと目が合った。


「俺が悪くないなら、真佳も悪くない」


お兄ちゃんは私の頬に流れる涙を親指でそっと拭った。


「ごめん、真佳」

「……謝らないで」

「じゃあせめて、思ってること聞かせて。我慢して堪えてた気持ち、全部ぶつけて欲しい」


お兄ちゃんは私の頬に手を当てた。


凛ちゃんと仲が良さそうに話しているのが悲しかった。私の知らない話をしている二人を見るのが辛かった。

仲良くしないで、優しくしないで。無条件に甘えることを許さないで。


堂々と隣に並んで歩きたい、真守って呼びたい。

手を繋ぎたい、ぎゅうしたい。


真守、真守、私は────。


「好き。大好き。真守が好き……っ」