「16歳の誕生日、おめで────っ!」


その言葉を全て聞く前に、体当たりするようにその人に抱きついた。

二人して砂浜に倒れ込んで、砂まみれになる。


そんなこと、今はどうでもよかった。


「お誕生日おめでとう、真佳。約束したのに遅くなって、本当にごめん」

「……っ、謝らないで!」


もっと言いたいことは沢山あったはずなのにやっと出たのはそんな言葉で、泣かないように強く閉じた瞼からやっぱりぽろぽろ零れた。

お兄ちゃんの鼓動はばくばくと早くて、着ているシャツは汗で湿っていた。

必死に走ってきてくれたことが分かる。


こんな私のために。

こんなサイテーな私のために。


それがどうしようもなく嬉しくて幸せで、その倍苦しかった。


「私、これを受け取る資格なんてないの……っ!サイテーなのずるいの!何も悪くない凛ちゃんをずっと恨んでた、凛ちゃんについて行ったお兄ちゃんにちょっと怒ってた。すごくすごく、嫌なやつだったっ。お祝いしてもらう資格なんて、私には……私にはないのっ」