屋敷の中は静かで、多分他のみんなはまだ夢の中なんだろう。
特にすることもないので、庭に水やりをするという茂夫さんを手伝うべくつっかけをはいて外に出た。
玄関を出ると眩しいほどの太陽の光が降り注ぐ。
「ほれ」
ぽふ、と頭に被せられたのは黄色のリボンが可愛い麦わら帽子。
「わっ、ありがとうございます……!」
「ん」
難しい顔でひとつ頷いた茂夫さん。
この顔がデフォルトだと言うのは先程でしっかり学んだ。
屋敷の裏にある蛇口に繋いだホースを手渡された。
「あんまり水をやり過ぎるな。俺は畑言ってるから、タエ子に聞かれたらそう答えてくれ」
「分かりました!」
元気よくそう答えると、少し目尻を下げた茂夫さんは私の頭をぽんと叩いて歩いていってしまった。