「あら茂夫さん、おかえりなさい。ねえ覚えてる?生田先生のところのお嬢さん、真佳ちゃん!」

「ああ、覚えてるよ。サツマイモ引っこ抜くのにすっ転んで頭打って血出して、ちっこいハゲつくってたな」


表情を変えずにそういった男性に「え!?」と素っ頓狂な声を上げて後頭部に触れる。


「あら覚えてなぁい?お正月に、お雑煮のおもちで喉を詰めたこともあったわよねぇ」

「トウモロコシ丸かじりして、乳歯が抜けて血だらけにもなってたな」


次々上がってくる恥ずかしい、それも何故か血だらけになることが多い過去に顔を真っ赤にして縮こまる。


「まぁ三つや四つの頃だ物ねぇ。覚えてないわよねぇ」


少し寂しげにそう言った女性に、申し訳ない気持ちになる。


「私はこの別荘の管理をしている佐藤タエ子です。この人は、夫の茂夫さん。昔みたいに、佐藤のおばちゃん、おじちゃんって呼んでくれると嬉しいわぁ」


そう言ってにっこり笑ったタエ子さん。

さすがにそう呼ぶのは恥ずかしいので、名前で呼ばせてもらうことにした。