背中に回された手が緩んで熱が離れていく。

なんだか寂しくて、そっと腕に触れた。


「明後日、真佳の誕生日の日。その日は必ずふたりで過ごそう」

「えっ……」


ぱっと顔をあげれば、お兄ちゃんは私の頬をさらりと撫でる。

その手が心地よくて自分の手を重ねた。


「でも、郁ちゃんと長谷川先輩は……?」

「どうにでもなるよ」

「ほんとに、ふたりで過ごせるの……?あの素敵な別荘に、ふたりきりで……?」

「うん」

「嬉しい……っ」


笑顔でありがとうと言いたいのに、涙腺がみるみる緩んでぽろぽろ涙がこぼれる。

こぼれる度にお兄ちゃんは、壊れ物にふれるかのように掬いあげた。


「当日は一番にお祝いさせて」

「ふふ、郁ちゃんの方が早いと思うよ。同じ部屋だし」

「じゃあ浅原さんは追い出そう」

「もう」


頬を合わせてクスクスと笑い合った。