だめだ、全然起きる気配がない。
「もう、お兄ちゃんってば!今日11時から予定あるんだよね? 起きなくて平気なの?」
「あと5分……」
「そう言っていつも起きないでしょっ」
お布団の膨らみをぽすぽす叩いて呼びかける。
「むりー……」と情けない返事をよこすお兄ちゃんは、いつもと違って情けなくて可愛い。
くふくふ笑いながら様子を伺っていると、布団の隙間から突然手がバッと伸びた。
「きゃっ」
吸い込まれるように布団の中へ引きずられる。
しっかり腰に回された両手に、頬にあたる胸板をぽんと叩いて顔を上げる。
わざとらしく顔を顰めたお兄ちゃんが半目で私を見下ろしていた。
「もー、お兄ちゃん!」
「真佳、ちょっと静かにして……」
「あっ、だめ!予定あるんでしょ?もう一時間しかないよ?」
うー、と唸り声を上げたお兄ちゃんは私の頭に顔をうずめる。
「甘い匂い……」
「かぼちゃのポタージュあるよ。お兄ちゃんが好きなやつ。早く用意しないと、食べれないよ?」
「……じゃあ、おきる」
半分も目があいていないけれど、そう言ったお兄ちゃん。
そんな姿が可愛くって、思わずえらいえらい、と寝癖のついた髪を撫でた。