長い間手を繋いでいたような、ほんの僅かな時間だったような。

マンションが近くなってきて、お兄ちゃんがすっと手を離した。


手のひらと左肩に残ったお兄ちゃんの熱が少しづつ冷めていくのが何だかとても悲しかった。



「真佳。再来週さ、2泊3日くらいで旅行でも行こっか」

「……え?」

「星が見える綺麗なところ。近くに海も山もあってさ」

「行きたい……!でも、急にどうしたの?」


不思議に思ってそう尋ねると、お兄ちゃんはくすくすと笑う。


「8月10日、何の日か忘れた?」

「8月10日……?あ、」

「この世で何よりも大切な人が生まれた日。真佳の16歳の誕生日、お祝いさせてくれる?」