入った瞬間、目の前に黒い壁が現れて思い切りぶつかった。
うっ、とぶつけた鼻を擦って見上げると、それは壁ではなく誰かの背中だった。
「あ、ご、ごめんなさい!」
「いや、俺も変なとこ立ってた。ごめ────真佳?」
振り返ったその人と目が合う。
「お兄ちゃん……? どうしてここに?」
スクールバックを肩にかけたお兄ちゃんがそこに立っていた。
目を瞬かせてそう尋ねる。
「三年のAコースの教室、空調が壊れたみたいでね。視聴覚室は広いしこの際節電も兼ねてってことで、教室が合同になったんだよ」
「そうなんだ……!」
特別補講とは言え、お兄ちゃんと同じ教室で勉強ができる!
嬉しくて思わず頬が緩んだ。