「これから大変だよ。真佳の方がつらい思いも沢山すると思う。普通のカップルみたいに、外で手を繋ぐことも、学校帰りにデートするのも、何も出来ないんだよ」

 「でもお兄ちゃんがそばにいてくれるなら、それで十分幸せだよ」


 お兄ちゃんは小さな声で何かを呟いた。


 「何……? なんて言ったの?」

 「真佳には適わないっていったんだよ」


 お兄ちゃんは私の頬を引っ張って、変な顔と笑った、そして鞄を肩にかけると、少し歩いて振り返る。


 「行こ」


 世界中が敵になっても誰にも認められなくても、お兄ちゃんがいなかった10年間に比べれば全然へっちゃらだよ。


 差し出された手を取る。

 届かないと思っていた星が、今ここにある。