「あ……ふたり分」
習慣になっていた二人分のお弁当作り。
もうお兄ちゃんが家を出て一週間も経ったのに、未だに二人分を作ってしまう。いつも綺麗にお弁当箱に詰めてから気が付き、そのまま三角コーナーに捨てている。
今日もそうしようと手を伸ばしかけて、ふと止めた。
『ねえ真佳。今度の日の弁当にさ、海苔巻いてあげたやついれてよ』
『唐揚げに海苔……? あ、分かった。唐揚げの磯部巻きだね』
『それそれ、あとオクラのおかか和えとかぼちゃの煮物も』
『あはは、分かった。お兄ちゃんって、渋い料理好きだもんね』
『真佳も十八になったらこの良さが分かるよ』
『ふふふ、何それ。じゃあ今度の体育祭の時に作るね。お兄ちゃんが頑張れるように。沢庵も忘れずにね』
ふたりでお弁当箱を洗った時にした会話だった。