きっとお兄ちゃんは私に気を遣って家を出たんだ。そして、もしかしたらもう、帰ってこないかもしれない。

 私たちはもう、兄妹ではいられない。



 重い体をひきずるように立ち上がる。


 雨が降ればいいのに。そうすれば体育祭も中止になって、実行委員でお兄ちゃんに会うこともないのに。


 そう思ってカーテンを開けると白い光が顔に降り注ぐ。私の心とは正反対の雲一つない晴天だった。


 「支度しなきゃ」


 言い聞かせるようにそう呟き、制服に着替えて部屋を出た。