「雪那ちゃん、また後でね」


 心美ちゃんの
 天使みたいに柔らかい笑顔が、
 私の心をポカポカにしてくれたのに。


 心美ちゃんが教室に入った瞬間

 私の顔から笑顔が消え
 心が一瞬で冷え冷えに。


 心にどくりどくりと、
 今朝の悪夢がなだれ込んできた。



 学校中を飛び交う黄色い声が、
 さらに私の心をえぐっていく。


『冬休み、千柳様ロスだったよ』

『わかる~。私なんて、
 毎晩ゾルックのライブDVD見てたし』

『生の理事長、早く拝みたいよね~』



 は~。

 今から全校集会で
 千柳様が壇上に上がるんだよね。

 大丈夫かな……私。



 千柳様を瞳に映しちゃったら。

 大好きな声を脳に届けちゃったら。


 涙……
 止められなくなっちゃうかも……




 思い出したかのように、涙腺が緩みだして。

 自分の教室に入る気力も
 講堂に行く勇気もなくて。



 一人になれる場所を探しながら

 千柳様LOVEの声が飛び交う学園内を
 歩き回った。