「氷牙、
 テレビの前のスペース借りていい?」


「いいけど」


「サンキュー」




 朝ごはんを作っている氷牙にウインクして

 俺はカバンの中から
 書道セットを取り出した。




 床に新聞を広げて。

 下敷きの上に半紙を乗せて。




「氷牙、水もらうね」


「ちょっと待て」


「ん?」


「千柳、オマエ。
 俺の家のリビングで、
 書道始める気じゃないだろうな?」



 キュッと首をかしげ。



「ダメ?」


 ファン好みの、甘いハニーボイスを
 響かせてみたけれど。
 
 氷牙にはもちろん、効果ゼロ。




「ダメに決まってるだろ!」と

 お玉を振り上げながら
 怒鳴られてしまった。
 



 って。
 全然、怖くないけどね。