ちらり、視線を移す。
隣の席はぽっかり空いたままだった。



星原くんと会ったのはあの日が最後。

ともだちじゃないよと言った彼は、あれから今日まで、学校には来ていなかった。担任は「星原は家の都合で休み」と言っていた。



家の都合って何だろう。あの夜に聞いた彼の昔話と、どこか繋がる部分があるのだろうか。


気になることは山ほどあるけれど、わたしにはそれを聞く権利も勇気もなかった。星原くんの連絡先は知らない。

わたしたちは、どちらかが学校を休んだ日に心配し合うような“ともだち”ではない。



それに、きっと星原くんが居たとしても、彼がわたしを助けることはなかっただろう。星原くんにとってあの夜はただの気休めで、大した思い出じゃないのかもしれない。


わたしだけが、勝手に特別感を抱いて記憶を引きずっているだけ。




星原くんとわたしは違う。それが本来の姿だ。

なにも、間違ってはいなかった。