視界に広がった夜空に、一瞬にしてくぎ付けになる。言葉が出てこなかった。
すごい、きれい、うつくしい、
そんなありきたりな言葉じゃ収まらないのに、そんなありきたりな言葉しか出てこない。
空が、夜が、世界が、近い。
それは、手を伸ばしたら届きそうなほど。
「すごいでしょ」嬉しそうにそういう星原くんに、わたしは強く頷いた。
「落ち着くんだ、ここに来ると」
星原くんがごろん、とコンクリートに仰向けになった。
いつもこうして一人で空を見上げているのだろうか。
目だけ動かした彼がわたしを見る。
とんとん、とコンクリートを叩き、その瞳はわたしを呼んでいた。流れるままに星原くんの隣に座り、恐る恐る寝転がる。
コンクリートのつめたい温度が、パーカー越しでもよく分かった。



