「ここ、おれのお気に入りの場所」
連れてこられたのは、駅から数分歩いたところにぽつんと建つ学校だった。ふとスマホで時刻を確認すると、もうとっくに21時をまわっていた。
どうやらここは小学校らしい。
校舎には明かりのひとつもついていなかった。もう職員はみんな帰ったのだろう。当然のことながら門も閉まっていて、正面から入るのは当然無理そうだった。
せかいが一番近くに感じる、星原くんのお気に入りの場所。門が閉まった、夜の学校。
なんとなく、この次の展開は予想ができる。
「…星原くん、まさかとは思うけど、」
「うん。多分、芽吹さんが今思ってるのであってるよ」
わたしにそう言った直後、星原くんは門の柵に手をかけると、ひょいっと飛び越えた。
手慣れた動きに、お気に入りというだけあって 頻繁に来ているんだろうなということはなんとなくわかった。



