このせかいに在るがまま









電車で3駅、時間に換算すると15分くらいだっただろうか。

学校に行く時とは違う路線を走る電車に乗って、見たことのない景色を窓から眺めながらついたのは、街灯がまばらに灯る閑散とした小さな駅だった。



もともと駅前の方も都会と言えるほどなんでもあるわけではないけれど、連れてこられたこの場所はお世辞でも栄えているとはいえないだろう。

建物も街灯もすくなく、利用者もわたしたち以外に見られない無人駅。


改札を出ると、地平線の向こうに海が広がっていた。




「海だ…」

「ん。芽吹さん、海は怖くない?」




わたしの一歩前を歩く星原くんがいう。「怖くないよ」と短く返せば、「そっか」と、さらに短い返事が返ってきた。


フードがついた黒いパーカーを着ている星原くんの背中は暗闇の中にうまく溶け込んでいる。

目を離したすきに消えていたらどうしようと、そんな馬鹿げたことを思った。