「…あの、星原く」
「ね、もう出ようか。準備できた?」
「…え、あ。うん」
「時間は有限だからね。せっかくのサボリ、うまく使おうよ」
多分、意図的だったと思う。
うまいこと話を逸らされた。やっぱり星原くんにとってあまり深入りされたくない話だったのかもしれない。
声に出して謝ろうかと思ったけれど、対象がわからないまま謝るのも違うかと思い、気を使わせてしまったことに対しては(ごめんね)と心の中で謝る。
「楽しみ、だね」
「…うん、そうだね」
ふたりで書きだしたリストを折りたたみ、借りた服のポケットにしまいこみ、リビングを出る星原くんのあとに続く。
わたしと彼、ふたり分の靴しか置かれていない玄関で靴を履き替え、「おじゃましました」と軽く家にむかって礼をし、外に出た。



