このせかいに在るがまま






「そろそろ行こうか」と言って星原くんがソファから立ち上がった。グラスに残った一口分のオレンジジュースを飲みきり、わたしもつられて立ち上がる。



予定より随分と長居してしまった。本当だったら、シャワーを借りるだけのはずだったのに。


誰かと笑いあったのは久しくて、いかに自分がこの世界に何も感じていなかったのかを自覚した。




「グラス下げてくるよ」

「…あ、ありがとう」

「芽吹さんは出かける準備しておいて」


キッチンに消えていく星原くんから視線を移し、何気なくリビングをぐるりと見渡す。家具は、ソファとテレビ、それから大きな棚があるくらいだ。


家に入った時に扉がしまった部屋がふたつあったのを見かけていたので、そのどちらかが星原くんの部屋なのだろう。