このせかいに在るがまま





わたしの家までは徒歩15分かかるので、たしかに星原くんの家に行く方が近いことは確かだった。


男の子の家に行くというのはやはり抵抗があったけれど、星原くんがあまりにもなんの邪心もなさそうな声色でいうものだから、心配するだけ無駄なのかもしれないと自己完結して落ち着いた、といったところである。



シャワーを借りて、いちごみるくのべたつきと香りを綺麗さっぱり落としたわたしの身体からは、星原くんから時折香る柔らかい香りと同じ匂いがした。


星原くんには1つ年上のお姉さんがいるらしく、借りたお姉さんのものだという服はサイズ感がぴったりだった。

お礼を言えば、「うん、ぜんぜん」と短く返された。



「これから何処に行こうね」



ソファに促され、オレンジジュースが入ったグラスを差し出される。

星原くんは、「せっかくだし行きたいところちゃんとリストアップしよう」と、棚の引き出しからノートをとりだして1枚破った。



少し間を開けてわたしの隣にすわった彼が、綺麗な指でペンをもつ。



〈芽吹と星原のやりたいこと〉とわかりやすいタイトルを書いた文字をみて、自分以外が書いた「芽吹」という苗字を見て、純粋に きれいだなと思った。