「図書室ってさ、山岸とか滝口が絶対来なさそうな場所だから」
星原くんが、またひとつ自分のことをわたしに教えてくれた。「たしかに」と頷くと、彼は小さく笑って言葉を続ける。
星原くんは基本、学校ではお昼ご飯を食べないそうだ。
理由は食べるのがめんどくさいからというのと、図書室は飲食が禁止だからということ。
あまり食にこだわりがなくて、食べられるときに食べられるものがあれば食べるというのが基本スタイルらしい。
「だから細いんだ、星原くん」
「べつに普通だよおれは。芽吹さんのほうが、ちゃんと栄養取ってる?ご飯食べててその細さ、心配になるけど」
「大丈夫だから、わたしは」
「大丈夫だよ、おれも」
図書室での私語は控えましょうというポスターは殆ど無効だ。
利用者が少ないわりにひろい図書室では、わたしたちの小さな話し声は カウンターにいる図書委員の生徒にはきっと届いていなかった。



