『ひるやすみ、図書室』
短い誘いだった。…いや、あれは本当にわたしへの誘いだったのかすら怪しい。
一通り館内をまわって星原くんのことを見つけられなかったら、大人しくいつもの場所に行ってお昼を食べよう。
「芽吹さん」
そんなことを思っていた矢先。
とん…と後ろから優しく肩に触れられ、自分の名前につれられるように振り向く。
するとそこには、朝の短いやりとり以外で目も合わせず言葉も交わさなかった星原くんの姿があった。
「来てくれてありがと」
「…星原くん……、遅くなってごめんね」
「いいよ、べつに。どうせまた山岸たちでしょ?」
星原くんの感情のこもっていない声にこくりと頷く。
午前中の授業が終わってすぐに教室を出た星原くんのあとに続いて、わたしも購買に寄ってから図書室に向かおうと思っていた。
けれど、財布をもって席を立とうとしたわたしの席に滝口くんがやってきたのだった。
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