「…姉ちゃん、もう目を覚まさないかもしれない」
「…、それは」
「姉ちゃんがおれの生きる希望だったんだ。…でも、それも全部、おれのエゴだったのかもって思うんだよ」
3年経った。この3年で、海歩さんは眠ったまま、両親は彼女を諦め、おばあさんは死んだ。
せかいへは不満ばかりがつのり、なにも解消しないまま希望ばかりが薄れていく。そんなせかいにため息が出る。
「姉ちゃんがあの日、本当にこの空を見て飛び降りたんだとしたら、おれは頷ける」
「星原、くん、」
「死にたくなるよ、今日の空」
死にたくなるほどの空を、星原くんは今日知った。
星が見えない。空一面を不安げな雲が覆っていて、広い世界は隠れてしまっている。
自然現象であり仕方の無いことなのに、こうも不安になってしまうのは、あの日のお姉さんの言葉が忘れられないからなのでは無いかと思うのだ。
「……こんな世界、おれが生きてる意味ってあんのかな」



