星原くんから聞いた話は、大方小宮先生から聞いた話と同じだった。
星原くんのご両親は、星原くんはおばあちゃん子だったから、会いたくなった時に電車ですぐに行ける距離にいられるようにとお姉さんと同じ高校を選んだと思っているらしい。
おばあさんが亡くなり、残ったのは目を覚まさないお姉さんくらいだから大丈夫だと、何の根拠もない「大丈夫」と共に転校をさせようとしてきたという。
『まだ2年生だから間に合うわよ、天晴』
『わざわざ海歩と同じ学校を選ばなくたってよかっただろう。おまえはもっと上に行ける』
『お母さんたちが嫌いなら、また一人暮らしでもいいから。だから、もうこの街からは離れよう』
星原くんのご両親は、どうやら海歩さんが昔あの屋上から自殺未遂したことをずっと根に持っているようで、本当はずっとこの街から痕跡を消したかったのだという。
けれど、おばあさんの家があるし、放っておくわけにもいかなかったので我慢していたのだと、星原くんはそのことをこの半年の間に伝えられた。



