「…どうしてここに来たの?」
きみがいるような気がしたから。
そう言ったら、きみはどんな顔をするのかな。
「ごめんね、芽吹さん」
わたしの返事を待たずして、星原くんは言葉を続けた。
ごめんって、何が?星原くんはわたしに謝らなければならないようなことをしたの?
星原くんに謝られると悲しくなる。
わたしはただ、星原くんと会えてこんなにも嬉しいのに、そう思うのは不謹慎なのではないかと不安になるのだ。
「…、なんで謝るの?」
わたしの問いかけに、星原くんは ふー…と深く息を吐いた。
「…芽吹さんのこと巻き込んだから。おれの都合で中途半端な話しばっかりしてたから、それでもし芽吹さんの生活が息苦しくしてたらどうしようって、ずっと不安だった。何も言わないまま突然いなくなってごめん」
「そんなの…」
「良くないんだよ。芽吹さんは、おれに優しすぎるから」
グッと口を噤む。星原くんは、「おれなんかに優しくしなくていいよ」そう言って力なく笑った。おれなんかに、なんて言わないで。
わたしが優しすぎるんじゃない。
きみが、頑張りすぎているのだ。
生きていてくれるだけで奇跡なのに、世界は星原くんに 全然やさしくない。



