このせかいに在るがまま






星原くんがいる。ずっと会いたかった人だ。


変わらない柔らかな声色に、どうしてか涙が出そうだった。

傘の隙間から覗いた顔は半年ぶりに見てもやっぱり綺麗で整っていた。髪を切ったのか、前までは前髪に少しかかるくらいだった前髪は短くなっていて、光のない瞳と視線が交わった。




元気だったよ。身体だけは元気なまま、わたしはずっと、変わらずつまらない日々を送っているの。



星原くん、半年も姿をくらませていったいどこで何をしていたの。どうして休学することを選んだの。どうして、何も言ってくれなかったの。


山岸さんも滝口くんも、もうあのクラスにはいない。向き合うことから逃げる教師は変わった。クラスメイトは相変わらずだけど、馴れ合いをしてくる人はいなくなった。


星原くんが居ない学校は酷くつまらない。話す相手はいなくて、ずっと孤独な時間を過ごしている。

わたし、何度もこの場所に足を運んだんだよ。星原くんに会いたかったのに、きみはここにはいなかった。



聞きたいことも話したいこともたくさんあるのに、久しぶりに会った星原くんを前に言葉がひとつも出てこない。





ねえ、星原くん。



今日は雨だから、あの時と同じ空はきっと見えないね。