今朝、わたしの上靴は在るべき場所にあった。ゴミが詰められていたりびしょ濡れになっていたりもしなかった。昨日学校を出る時に閉まったあとから誰かに触れられた形跡のない上靴だった。




「芽吹さんおはよう」
「あ、芽吹さんだ。おはよ」
「おはよー芽吹さん!」




上靴を履いて教室に向かう途中、クラスメイトの女子生徒から声をかけられた。


いじめが始まる前まではわりと挨拶を交わしてくれていたクラスメイトたちだった。偽りのない笑顔だったと思う。居ないものとして扱われることに慣れ始めていたわたしには、少々気味の悪いことだった。



教室に着くと、口々に挨拶をされた。

気味悪いな、と思いながら机に向かうと、落書きがなかった。机の中も空っぽで、いつもみたいにぐしゃぐしゃにされたプリントやゴミが詰まっていない。



気味の悪さがとある確信に変わったのは、ある人からの声だった。




「め、芽吹さん、おはよっ」