まだ日が完全に暮れる前に叔母さんの家に帰るのはいつぶりだっただろうか。


叔母さんもわたしがこんなに早く帰ってきたことに驚いたのか、「お、おかえり…?」と疑問形で言われた。



ここは他人の家だ。


手元に残った遺品は手作りの御守りだけ。わたしが住んでいた家は 1人で住むには広すぎるから、と少し前に売り払われてお金に変わった。


望んだことではないが、拒否したことでもなかった。別にどうでも良いと思っていたし、今もそれは変わらない。




「、今日は早いのね」

「……、バイトが無くなったので」

「ご飯は、いるの?」

「…あ、えっと」





​───ふと脳裏を過った もしもの話。


考えたこともなかったけれど、もしかしたら叔母さんを含める親戚は、未成年だからという理由以外にもだだっ広い一軒家に一人で住む寂しさを紛らわせるための提案だったのかも、と 何に感化されたかも分からない頭で思う。



他人の味とはいえ、ご飯を作ってくれている。
寝るところを用意してくれている。

干渉しないのは、わたしが実の子供ではないことで どう接して良いかわからないから​───だとしたら。





「……あの、ご飯 頂きます」

「そ、そう?用意するわね」



気付けなかった優しさに目を向けてみようと、なんとなく……本当になんとなく 思ったのだ。



食卓に並べられたご飯はやっぱり他人の味がしたけれど、いつもよりは少しだけ暖かい味がした、ような気がする。