ハルさんはこめかみを押えてしばらく考える。
そして、少し笑った。
「そうだね。新作のジュエリーについて、ぜひ夏怜ちゃんの意見も聞かせて欲しいな。自分にはない視点から思わぬアイディアが生まれたりするもんね」
それは良い、と彼は楽しそうに何度もうなずく。
それから思い出したというように、「そういえば……」と別の話を切り出した。
「夏怜ちゃんは冬休みに実家へ帰ったりするの?」
「冬休みですか?まあ……たぶん」
「あれ、あんまり乗り気じゃなさそう」
「そういうわけじゃ……」
去年は夏休みと春休みの長期休暇だけ帰り、年末年始は帰らなかった。しかし今年は集中講義などもあり、夏休みも帰っていない。親戚も集まることだし、今回は帰った方が良いだろうとは思っている。
だが正直面倒だ。遠いし、心配されているが故に小言も多いし、そして何より「偶然知り合った有名なジュエリーブランドの一回り年上の副社長の家に住んでいる」という状況を家族には何一つ説明していない。
それを隠したまま顔を合わせるというのも、私が頑張って一人暮らしをしていると信じている家族を騙しているようで気分が悪い。かといってこの状況を一から説明しなければならないとなれば、それはそれで気が重い。
「ハルさんは年末年始どうするんですか?」
「うーん、毎年大晦日と三が日は各所に挨拶に行ってるから今年もそうなるかな」
「おお……大変ですね」
「でもクリスマスイブとクリスマスは空けてあるよ」
「え」
ソファーに座ったハルさんが、にこりと笑って私の方へ手を伸ばす。その手に引かれ、私は彼の隣に腰を下ろす。



