ビニール傘を差し出したら、結婚を申し込まれました。



 何だって。

 私は“ICHIGAYA”のホームページでちらりと見た五十過ぎぐらいの男性を思い出す。写真で見ただけの印象だが、どこかハルさんの面影がある、威厳のある雰囲気だったように思う。

 知らないうちに私はあの人に存在を認知されていたのかと思うと少し緊張する。


「ええと……それについてお父さんは何て?」


 考えてみれば、本来ハルさんが結婚するはずだったのは、木坂家という名家のお嬢様である澪さんだ。それが破談になった上、今度はごく普通の女子大生を恋人にしていると知ったハルさんのお父さんはいったいどう思うだろう。少なくともあまり歓迎はしないのではないか。

 その予感は的中したらしかった。


「本当に大丈夫なのか、とは何度も言われたよ。まあ普通そうなるよね」


 ハルさんは言いづらそうに言った。

 ああ、やはりそうか。澪さんと結婚すれば、会社としてもたくさんのメリットがあったに違いない。だけど、私ではそんなものあるはずがない。

 会わせるよう何度も言われているとのことだから、きっと近いうちに会うことになるだろう。その時に別れさせられるようなことがあったらどうしようか。


 思考がだんだんとマイナスになっていく。だが、ふと思った。


「私がハルさんの役に立つことを証明したら認めてもらえるようになるんじゃ?」

「ん?」


 顔を上げて言うと、ハルさんは怪訝な顔をした。


「例えば、ハルさんが今頭を悩ませているというアクセサリーのデザイン。それの完成に協力できれば、役に立ったと思ってもらえて、ハルさんの彼女として認めてもらえるかもしれない」

「えっと、夏怜ちゃん?」

「一応大学でデザインについても学んでいます。何か役に立てませんかね?」

「あー……色々と突っ込みたい……けど、うん……」