ビニール傘を差し出したら、結婚を申し込まれました。




 きっと謙遜しているのだろうと思った。今までのものもきっと魅力的な物だったに違いない。

 それにしても……私をイメージしたというのは嘘だろうが、ハルさんがデザインした物が私のイメージに合うというのは嬉しい。


「ずっと考えてるんだけど、新しいデザイン本当に思いつかないんだよな……あ、ご馳走様でした。美味しかった」

「はい。えっとじゃあ、この週末はデザインを考えるのに集中しますか?」

「うん、そうしようかな」


 眠そうに目をこするハルさんのお皿を回収し、キッチンへ運んでいると、ケータイのバイブ音が聞こえた。
 鳴っているのはどうやらハルさんのケータイらしい。画面を確認した彼は苦虫を嚙み潰したような顔をして電話に出た。


「もしもし。……年末だろ?わかってるって。……え?心配されずとも仲良くやってるから。ああ。そのうち紹介する。うん。うん……要件は以上?じゃあ」


 誰と話しているのだろうと、食器を洗いながら耳を傾ける。
 ため息をついて電話をきったハルさんへ問いかけるように目を向けると、視線に気づいた彼は気まずそうに笑ってみせた。


「父さんだよ、電話してきたの」

「お父さんってことは、“ICHIGAYA”の社長さん?」

「そうそう。会社で会うときは業務に関係した会話しかしないから、こうしてたまに電話してくるんだ」


 ハルさんは面倒くさそうに頭を掻く。


「この間ぽろっと夏怜ちゃんのこと言っちゃったのがまずかったかな。会わせろってうるさいんだよ」

「私のことを……。何て言ったんですか?」

「結婚する気はないのかって聞くから、彼女がいるって。……そしたらまあ根掘り葉掘り聞かれてね」